こう門外科 – 外科

「痔疾患」について - 目次

診察

診療の流れ

  1. 受診時に“肛門診療の実際”という小冊子をお渡しして、これから行われる診察の説明をいたします。
  2. 同時に“問診表”をお渡ししますので、あせらずに、正確に記入をお願いします。
  3. 医師が直接、現在お悩みの症状についてお尋ねいたします。
  4. 診察をします。左側を下にしてベッドで横になり、診察直前に下着を下していただきます(シムス体位)。
  5. 診察の結果と、病気について、および今後の治療に関して詳しい説明をいたします。(電子肛門鏡で患者さまに、御自身の実際の状態を確認していただけます。)

外来初診予約について

当科外来は予約制の診療ではありません。基本的に受付順での診察になります。

ただし、火曜日の午前中は肛門疾患の予約外来にしましたので“かかりつけ医”の先生から当院の地域連携センターを通して初診予約が可能です(紹介外来)。

誠に申し訳ございませんが、患者さまご本人からの初診予約は受け付けておりません。

治療費について

当院は健康保険を用いて診察・治療を受けることができる(保険診療)ので、費用は1~3割負担で済みます。

費用は疾患や治療法により異なりますので、詳細は医事課(受付・窓口)でお聞きください。

痔疾患について

痔の種類と症状

おしりの3大トラブル “出血” “痛み” “脱出”

痔は便の通り道である肛門の病気の総称で、全体の約8割を占める痔核(いぼ痔)、裂肛(切れ痔)、痔瘻(あな痔)を痔の3大疾患と呼んでいます。男女ともに最も多いのが痔核で患者さんの約半数を占めるといわれています。次いで多いのは、男性では痔瘻、女性では裂肛になります。

1. 痔核(いぼ痔)

図1
図1

痔核は男女ともに最も多い痔疾患で患者さんの5~6割を占めるといわれています。痔核はその形から“いぼ痔”ともいわれます。肛門を閉じるのに役立っているクッションと呼ばれる粘膜下部分が大きくなり、出血や飛び出すなどの症状を引き起こします。これには腸と皮膚の境目である“歯状線”より直腸側に出来る内痔核と肛門側にできる外痔核があります。(図1)

原因は主として排便時の“いきみ”です。内痔核は通常痛みがないため、出血や痔核が脱出することによって気がつくことが多いようです。内痔核の進行度は、まず出血、ついで排便時に脱出するが自然に戻る、さらに進行すると脱出を戻すには指で押し込まないといけない、一番ひどい状態は脱出したままで戻らなくなった状態です。(図2)

図2
分類 主な症状
I度 図2
  • 痔核の脱出はなく、排便時に鮮血を出血することが多い。
II度 図2
  • 排便時に脱出するが、自然に戻る。
III度 図2
  • 脱出して、指で押しこまないと戻らない。
IV度 図2
  • 指で押し込んでも戻らず、出たままの状態となる。
血栓性外痔核 図2
  • 肛門周辺に血栓(血の塊)が作られたもの。
嵌頓痔核 図2
  • 痔核内に血栓が多くでき、嵌頓状態(脱出して腫れ、戻らなくなる)となったもの。

外痔核は皮膚組織に出来るので痛みを伴うことが多く、肛門に負担がかかったときに突然出来ることが特徴で、指で硬いしこりとして触れることができます。

2. 裂肛(切れ痔)

裂肛は“切れ痔”とも呼ばれ、痔疾患の約15%を占めるといわれていますが女性に多いのが特徴です。硬い便の排泄や、勢いよく出る下痢などにより肛門周囲の皮膚が切れたり、裂けたりして起こります。出血は少量ですが排便後も引き続く痛みのため便意を我慢するようになると、“便秘の悪化~排便時に同じ場所がさらに強く裂ける”という悪循環が繰り返されるようになります。この悪循環が慢性化すると肛門潰瘍となり、やがて肛門狭窄を引き起こします。

3. 痔瘻(あな痔)

痔瘻は“あな痔”とも呼ばれ、痔疾患の約15%を占めますが、男性に多いのが特徴です。直腸と肛門の境目には肛門小窩という小さなくぼみが8~14個あります。通常、このくぼみに細菌が入り込むことはありませんが、激しい下痢をした場合などに便が肛門小窩に入り込むことがあります。そうすると細菌が肛門小窩につながる肛門腺に炎症を起こし肛門の周りに膿がたまります。これが痔瘻の前の段階といわれる”肛門周囲膿瘍“です。肛門周囲膿瘍ができると肛門の周囲が腫れ、激痛を起こします。痛みとともに発熱するのが特徴的です。肛門周囲膿瘍が自然に破れるか、切開することにより膿が排泄されます。膿が出てしまうと痛みも腫れもおさまり、約3割の人が完治すると言われています。しかしながら、残りの7割の人は肛門小窩から膿の出口までトンネルが出来てしまい、その後も細菌感染を起こし化膿を繰り返す痔瘻を形成します。ストレスやアルコール摂取などによる下痢が原因と考えられています。

痔瘻のタイプはトンネルの方向により分類され、それぞれに治療法が異なります。(図3)

図3
図3

こんな症状ありませんか?

内痔核編

  • 排便の後、紙や便器に真っ赤な血がつく
  • 排便の後もすっきりせず、残便感がある
  • 排便の後、肛門から“いぼ”のようなものが飛び出す
  • 排便に関係なく“いぼ”のようなものがあり粘液や便がしみでる

裂肛編

  • 排便の後、おしりに激痛がはしる
  • 排便の後も、しばらく痛みが続く
  • 排便の後、紙や便器に少量の血がつく
  • 肛門が狭くなり、細い便しか出せない
  • 痛みのために、排便するのが怖い

痔瘻・肛門周囲膿瘍編

  • おしりが腫れて、ズキズキ痛む
  • おしりに痛みがあり、発熱する
  • おしりから膿が出て、下着が汚れる

痔を予防するために - おしりのための注意点

痔は一種の生活習慣病といえます。従って、生活習慣の改善が痔の治療の基本となります。痔を予防したり、あるいは悪化させないためには以下にのべるようなポイントに気をつけて、正しい生活習慣を身につけましょう。

1. おしりはいつも清潔にしましょう。
おしりを清潔に保つために温水洗浄便座は有効ですが、使いすぎや浣腸がわりに使用するなどの誤った使用法は逆効果になりますので注意しましょう。
2. 毎日おふろに入りましょう。
お風呂でからだを温めると肛門周囲の血行が良くなり、清潔も保てます。
3. 便秘にならないように気を付けましょう。
便秘は痔の最大の敵であると言われています。規則正しい生活を心がけ、朝食を必ず食べるようにしましょう。食物繊維や、水分を十分にとり便通を良くしましょう。また便意があったら我慢しないでトイレに行きましょう。
4. 下痢をしないようにしましょう。
下痢も肛門を刺激して痔疾患を悪化させます。また肛門周囲の清潔も保てません。
5. 排便は3~5分以内で、いきまないようにしましょう。
長い時間いきむことでおしりの血行が悪くなり痔の原因になります。便を完全に出し切ろうとしてがんばらないことが大事です。また腹圧のかかる運動も避けたほうが良いでしょう。
6. 腰を冷やさないようにしましょう。
体が冷えるとおしりの血行が悪くなり、痔を悪化させます。
7. 長時間の同じ姿勢は避けましょう。
同じ姿勢をとり続けると肛門がうっ血しやすくなります。長時間同じ姿勢が続く場合は、時々体を動かして血行を促すようにしましょう。
8. 全身の健康を維持しましょう。
ストレスや疲労が重なるとおしりの血行が悪くなり、自律神経も乱れるため便通異常を招きます。十分な睡眠とバランスの良い食事、ゆとりのある生活を心がけましょう。
9. アルコール、刺激物は控えめにしましょう。
アルコールや刺激物は肛門を刺激したり、うっ血させたりして痔を悪化させます。また下痢を引き起こす場合もありますので摂取しすぎに気を付けましょう。
10. 間違った治療は禁物!医師の正しい診察を受けましょう。
正しい診断が痔を治す第一歩です。腸の病気でないことを確かめることも重要です。

肛門疾患の治療

肛門疾患の治療に関しては、複数ある治療法の中から患者さまの病態に最適な治療法を選択してお勧めいたします。しかしながら、最終的には患者様ご自身の希望に沿った最適ではなくても、最良の治療法も施行可能ですからご希望は遠慮せずにお話しください。

局所麻酔や仙骨硬膜外麻酔で施行可能な日帰り手術から、クリニカルパスに沿った入院手術まで対応しております。

当科で施行している主な術式

痔核 ALTA(ジオン)、結紮切除術(守谷・松田式)
痔瘻 切開開放術、ミニマルシートン術、シートン術
裂肛 側方皮下内肛門括約筋切開術
直腸脱 Gant-Miwa-Thiersch法、Delorme法、直腸後方固定術

もしも痔になってしまったら

痔の治療法は生活習慣の改善と薬を用いた“保存的治療”と手術などをともなう“外科的治療”に分かれます。また“痔核”“裂肛”“痔瘻”といった痔のタイプによっても治療法は異なります。

しかしながら、すべての痔疾患の治療の基本は保存的治療です。保存的治療で症状が軽快しない場合や痔のタイプ・重症度によっては外科的治療が必要になります。

肛門科を受診した人のうちで手術が必要とされる人は、痔のタイプを問わない平均値では2割程度といわれています。タイプ別では、痔核で2割、裂肛で1割、そして痔瘻では8割程度といわれています。

1. 痔核(いぼ痔)の治療法

痔核には腸と皮膚の境目である“歯状線”より直腸側にできる内痔核と肛門側にできる外痔核があります。

内痔核は症状によりI~IV度に分類されます。また激しい痛みを伴う急性期の痔核として“血栓性外痔核”と“嵌頓痔核”があります(図2)。

図2
分類 主な症状
I度 図2
  • 痔核の脱出はなく、排便時に鮮血を出血することが多い。
II度 図2
  • 排便時に脱出するが、自然に戻る。
III度 図2
  • 脱出して、指で押しこまないと戻らない。
IV度 図2
  • 指で押し込んでも戻らず、出たままの状態となる。
血栓性外痔核 図2
  • 肛門周辺に血栓(血の塊)が作られたもの。
嵌頓痔核 図2
  • 痔核内に血栓が多くでき、嵌頓状態(脱出して腫れ、戻らなくなる)となったもの。
内痔核の治療法
(1)保存的治療

内痔核治療の基本は、この保存的治療です。通常、出血はするが脱出のないI度の内痔核に適応とされます。食生活や排便習慣などの生活改善療法を主体にして、補助的に薬物療法で対応します。

(2)注射療法

痔核に硬化剤(フェノールアーモンド油)を直接注射して硬化・縮小させます。保存的治療を続けても出血を繰り返す場合に効果的です。無麻酔で外来治療できますが、その効果は一年程度です。

(3)ゴム輪結紮療法

痔核の根元をゴム輪で縛り、徐々に締め付けて脱落させます。軽度から中等度の脱出する内痔核に効果的です。無麻酔で外来治療できますが、痔核の大きさやできた場所によっては処置できない場合があります。

(4)結紮切除術(守谷・松田式手術)

痔核に血液を送る血管をしばり(結紮)痔核を切除する方法です。切除した後、肛門の内側の傷は縫ってしまいます。この術式はすべての痔核に対応でき、日本では最も一般的な手術法です。

(5)ALTA療法(ジオン:四段階注射法による硬化療法)

特殊な注射液を痔核に注入して硬化・退縮させ、痔核の脱出や出血を消失させます。これまで結紮切除術でしか治せなかったような重度の内痔核にも効果があります。しかしながら、手術に比べ再発率がやや高く、この治療ができる医師は決められた講習会を受けて技術を習得した医師に限定されています。

※ALTA療法についてはこちら(広報誌バックナンバー No.12)もご覧下さい。

外痔核の治療法

外痔核は何も治療しなくても自然に治る病気です。

血栓ができた場合、初期のものであれば保存的治療をします。血栓が大きい場合や痛みが我慢できない場合には血栓を取り除く手術を外来で行う場合もあります。

2. 裂肛(切れ痔)の治療法

基本的な治療は、原因となる便秘や下痢を防ぎ傷を治す保存的治療です。慢性化して肛門が狭くなった場合には手術が必要になります。

実際に手術を必要とするのは裂肛の患者さんの1割程度です。

(1)保存的治療

食生活や排便習慣などの生活改善療法を主体にして、補助的に薬物療法で対応します。

(2)用手肛門拡張術

おしりの麻酔をして緊張している肛門括約筋を指で広げる方法です。肛門狭窄が軽い場合に外来で施行されます。

(3)内括約筋側方皮下切開術(LSIS法)

肛門の皮膚からメスを入れ、狭くなった内肛門括約筋を浅く切開します。これにより筋肉の緊張がとれ肛門が広がります。軽い肛門狭窄に効果的です。

(4)皮膚弁移動術

裂肛部分とポリープや見張りイボを切除し、同時に内括約筋の一部を切開し肛門を広げます。切除した部分には肛門の外側の皮膚の一部を移動して縫い合わせます。肛門狭窄が強い場合に有効です。

3. 痔瘻の治療法

肛門周囲膿瘍の段階では、外来で腫れている部分を切開し膿を出します。これで一時的に症状は治まりますが、大半のケースでは瘻管が残り痔瘻になります。痔瘻の患者さんの約8割が根治手術を必要とします。場合によっては、肛門周囲膿瘍の段階で痔瘻の根治手術を行います。

痔瘻は瘻管の方向で分類され(図3)、それぞれで治療法が異なります。

図3
図3
(1)切開開放術

瘻管を入り口から出口まで切開して、そのまま開放する手術です。痔瘻が皮膚の浅いところにある場合(皮下痔瘻)や単純痔瘻(低位筋間痔瘻)で瘻管が後方にある場合に行います。括約筋を少し切ることになりますが機能的には問題なく、再発がほとんどありません。

(2)ミニマルシートン術

前・側方の単純痔瘻(低位筋間痔瘻)に対して施行される手術です。くりぬき法とシートン法の長所を合わせた手術法で、術後肛門機能が可及的に温存され、再発も少ない方法です。

(3)シートン法

複雑な深部痔瘻(坐骨直腸窩痔瘻、骨盤直腸窩痔瘻)に対して施行される手術です。瘻管の入り口から出口までゴムひもなどを通して縛り、徐々に切開して開放する方法です。すべての痔瘻に応用可能です。この手術の特徴は瘻管の開放が進む一方でその傷が修復するので、後遺症や再発がほとんどないということです。当科では、手術前日にMRI検査を行い痔瘻の形態を明らかにした後、シートン法を応用した侵襲の小さい手術(MRI navigating seton手術)を導入しております。

4. その他の肛門疾患

(1)直腸脱

壮年までの方や、高齢でも全身麻酔が可能で希望される方には、再発がきわめて少ない腹腔鏡下あるいは開腹の直腸固定術を施行しております。高齢の方には、侵襲の少ない経肛門的手術法(Gant-Miwa-Thiersch法、Delorme法)をお勧めしております。

(2)その他

術後後遺症、毛巣瘻、膿皮症、尖圭コンジローマ、クローン病の肛門病変、肛門掻痒症、悪性腫瘍などにも対応しております。(尖圭コンジローマ、肛門掻痒症は当院皮膚科ともタイアップして治療いたします。)

5. 術後

手術後は、局所麻酔の方は治療終了直後あるいは約2時間外来で様子を見た後、帰宅になります。仙骨硬膜外麻酔の方は、約2時間外来で様子を見た後、帰宅になります。腰椎麻酔下に手術を施行した場合の入院は、術前日入院で、術後2日目以降の退院になります。直腸脱の手術を施行された場合は、術後7-14日目の退院になります。ほとんどの肛門疾患の手術入院はクリニカルパスに沿って行われます。

当科での基本的な術後入院日数は、ALTA:1日、結紮切除術:2~5日、単純痔瘻手術:3日、複雑・深部痔瘻手術:3~7日、裂肛手術:1~3日です。

最終的に退院日を決定されるのは患者さまご自身ですので、手術予約時、手術後に十分に主治医と相談して退院日を決めてください。

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