整形外科 手の外科センター 手の外科用語解説 - 診療科目・内容

手の外科用語解説

労災疾病等13分野ホームページより一部転載

切断

指や手などが労働災害などの外傷によって完全に切り離された状態。マイクロサージャリーの技術によって再接着(切断された組織をつなげること)することが可能ですが、切断組織の血行を早期に再開するために緊急に手術を行うことが必要です。

不全切断

指などが外傷によってほぼ切り離されており、皮膚や一部の軟部組織によってかろうじて連続性が保たれてはいるが、末梢の血行が極めて乏しい状態。血行再建を行わない場合末梢組織が高率に壊死(組織が死んでしまうこと)となります。

再接着

切断された指や四肢に、マイクロサージャリーによる微少血管吻合を行って血行を再建し、血の通った生きた組織として生着させること。通常、骨接合、腱縫合、神経縫合、血管吻合(動脈、静脈)というステップを要し、術者には骨、腱、神経、血管それぞれの手術に精通していることが求められます。マイクロサージャリー技術の進歩により今日では指尖部の極めて細い血管(直径0.5mm以下)も吻合可能となり、再接着の適応は拡大しつつあります。

右母指切断に対する再接着(日本手外科学会、手外科シリーズより)
切断指保存法
清潔なガーゼで切断指をくるみ、ビニールバッグに入れて密封し、氷の中に入れて冷却。指を直接氷の中に入れない。
(微小外科(南江堂)から)

血行再建

不全切断指(肢)に対して、動脈や静脈を修復することによって、末梢の血行を再建し、組織壊死のリスクを回避すること。基本的には再接着手術に準じた手術となりますが、残存組織を温存しつつ骨接合、腱縫合、神経縫合そして血管吻合を行うため、再接着手術より難しくなることもあります。

マイクロサージャリ―

手術用顕微鏡を用いて、細かな神経や血管を操作する手術。手の外科領域では直径0.5mmmから3mm程度の血管や神経を縫合する技術が必要となります。この手術手技によって切断指(肢)再接着遊離(複合)組織移植(用語解説参照)が可能となりました。

遊離(複合)組織移植

外傷や腫瘍切除(主として悪性腫瘍)の後に生じた組織欠損の再建のために身体の他の部位の組織を血管(動脈、静脈)付きで移植すること。腎移植などは他人の組織や器官を血管付きで移植しますが、遊離組織移植では自分の身体のある部分の組織を他の部位に移植します。具体的には皮膚、筋肉、骨などをそれらの栄養血管(動脈と静脈)とともにいったん身体から切離し、採取部から離れた欠損部に移動した後に、血管吻合を行って生着させます。

遊離組織移植で血行のある組織の移植が可能となったことによって、それまでは切断を余儀なくされていた、骨髄炎や悪性腫瘍切除後の広範囲骨欠損などの患肢温存(切断せずに罹患肢を温存すること)が可能となりました。

下腿組織欠損の遊離広背筋皮弁による被覆

植皮

外傷や熱傷(やけど)などによって生じた皮膚欠損の治療のため身体の他の部位から皮膚を採取し欠損部に移植すること。採取された皮膚自体には血行はありませんが、移植された部位から毛細血管が進入することによって血行が再開され生着します。基本的には皮膚の切開、縫合という基本的な手術手技で施行可能ですが、皮膚移植を受ける部位に感染を認めず、血流の良好な組織で覆われていることが必要です。

皮弁

外傷や熱傷(やけど)などによって生じた皮膚および軟部組織欠損を再建するために、身体の他の部位から血行のある組織を移植すること。通常の植皮では被覆が難しい骨や腱などの深部組織の露出を伴う血行不良な皮膚欠損や、関節近傍などの弾力性のある皮膚や軟部組織が要求される場所に用います。欠損部近傍の皮膚を利用したり、欠損部から離れた皮膚を利用したりすることが可能です。様々な分類法がありますが、本用語解説内では有茎皮弁、遊離皮弁について解説します。

有茎皮弁

皮弁を移植する際に採取する組織を完全に切り離さずに一部連続させたままにしておいて(この部分を皮弁の茎と称する)、血行を温存しつつ移植部位に縫合固定する手技。移植部位と皮弁の結合が完成し移植部位からの血流で皮弁が生存できる状態になったら(約3週間)茎部を切り離します。手の外科領域では「腹部有茎皮弁」というお腹の皮膚を手に移植する手術がよく行われますが、この場合罹患手を約3週間程度お腹に縫いつけた様な状態になり、肘や肩を長期間動かせないことから茎部を切離した後に、関節が固くなってしまう(拘縮といいます)ことがあります。

遊離皮弁(遊離組織移植)

皮弁を移植する際に移植組織を血管(動脈と静脈)を含んだ状態で完全に切り離し(本来の部位から完全に遊離した状態)、欠損部に移動した後、欠損部近傍の血管と皮弁の血管を縫合することによって移植組織の血流を再開して生着させる手技。血管縫合にはマイクロサージャリーの手技が必要となります。遊離組織移植のうちの一つで、移植組織としては皮膚だけにしたり、骨や腱を含む複合組織として移植することも可能です。

腕神経損傷

手の感覚や運動を司る主要な神経は正中、橈骨、尺骨神経であり、これらは全て頸部の脊髄から枝分かれした神経(神経根)が頸部から鎖骨の下をくぐって腋窩にいたる間に神経間の枝分かれや吻合を繰り返すことによって形成されます。この部位で上肢に至る神経が形成している網目状の構造を腕神経叢といい、腕神経叢に牽引力などの外力が生じることによって引きおこされる神経損傷を(外傷性)腕神経損傷といいます。オートバイ事故などの交通事故で生じることが多い損傷です。完全な損傷から部分損傷まで種々の損傷パターンがあり、正確な診断と時期を逸しない専門的な治療が必要となります。

腕神経叢損傷

手の感覚や運動を司る主要な神経は正中、橈骨、尺骨神経であり、これらは全て頸部の脊髄から枝分かれした神経(神経根)が頸部から鎖骨の下をくぐって腋窩にいたる間に神経間の枝分かれや吻合を繰り返すことによって形成されます。この部位で上肢に至る神経が形成している網目状の構造を腕神経叢といい、腕神経叢に牽引力などの外力が生じることによって引きおこされる神経損傷を(外傷性)腕神経損傷といいます。オートバイ事故などの交通事故で生じることが多い損傷です。完全な損傷から部分損傷まで種々の損傷パターンがあり、正確な診断と時期を逸しない専門的な治療が必要となります。

腕神経損傷に対する腓腹神経移植 (Green's operative Hand Surgery 6th ed.から)

屈筋腱損傷

指を曲げる腱を屈筋腱といい、母指には1本、示指から小指にはそれぞれ2本の屈筋腱が存在します。外傷を高頻度に被りやすい手部において屈筋腱はその大部分が腱鞘というトンネル構造の中にあり、指の曲げ伸ばしに際して屈筋腱は狭いトンネルの中をスムースに動くことが要求されます。したがって、屈筋腱断裂に関しては精巧な機械を修理するような精密な手術手技と、本損傷に特有の特殊なリハビリテーションが必要となります。

腱を縫合した場合、組織が癒合するまで(約3週間)は、手指をギプスなどで固定して縫合部の安静を保つことが必要ですが、断裂部を単に縫合して術後の固定を行うだけでは、腱鞘というトンネル構造の中で腱は周囲と癒着(周りの組織と強くくっついてしまうこと)し、指は全く動かない状態となってしまいます。一方癒着をおそれて縫合後早期から指の運動を開始した場合、縫合部が十分に癒合しない状態で強い負荷がかかることになり、縫合部での腱の断裂の危険があります。つまり、組織修復の観点からは固定による腱修復部の安静、機能温存の観点からは早期からの運動という全く相反する要求が屈筋腱の治療には存在します。

これらの問題を解決するため、我々は屈筋腱を早期からの運動に耐えられるだけの強固な縫合法で固定し、腱の癒合が完成する以前からリハビリを開始する早期運動療法(リハビリの項参照)を主として行っています。屈筋腱手術に慣れた手の外科医と作業療法士(ハンドセラピスト)との緊密な連携が必要です。

深指屈筋腱断裂とその治療(日本手外科学会、手外科シリーズより)
屈筋腱が直接縫合(屈筋腱修復)または遊離腱移植(屈筋腱再建)によって治療されている

No man's land

手掌から指の中央までの屈筋健損傷は、かつては腱を縫合しても腱と周囲組織との癒着によって手指が動かなくなることから、何人も手をつけてはいけない領域つまり”No man's land”といわれていました。現代手の外科においては、この領域は適切な縫合法と術後リハビリテーションとの併用で良好な成績が期待できることから、トレーニングを受けた手の外科医であれば治療する資格がある領域つまり、”Some men's land”と考えられています。

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